休職中の過ごし方——回復を早める3つの習慣

「休んでいいと言われたのに、休み方がわからない」。休職に入ったばかりの方から、実際のセッションでよく聞く言葉です。横になってもスマホで仕事のメールが気になる。眠ったはずなのに疲れが取れない。そんな状態ではないでしょうか。この記事では、臨床心理士の立場から、休職中の回復を早める3つの習慣と、焦りとの付き合い方をお伝えします。

目次

「休むこと」が一番むずかしい

休職初日から気持ちよく休める人は、ほとんどいません。多くの方が最初にぶつかるのは、罪悪感と焦りです。

「同僚に迷惑をかけているんじゃないか」「早く戻らないと居場所がなくなる」。頭ではわかっていても、こうした考えが勝手に浮かんできます。日中にテレビを見ていると、なぜか落ち着かない。何もしていないのに、夕方にはぐったりしている。

以前、休職中のクライアントの方から「休んでいるのに、通知が鳴るたびに心臓が跳ねる」と言われたことがあります(※守秘義務の範囲で表現を変えています)。それくらい、体に染みついた緊張は簡単には抜けないものなんです。

特に真面目な方ほど、「休職中も何か生産的なことをしなければ」と考えがちです。資格の勉強を始めて、かえって消耗してしまった方も現場で見てきました。

これは意志の弱さではありません。長い間、緊張状態で走り続けてきた心と体が、急に止まり方を忘れてしまっている状態です。「休めない自分」を責める必要はまったくないんです。

なぜ焦りが回復を遅らせるのか

ここで少し、体の仕組みの話をさせてください。

強いストレスが続くと、交感神経(体を戦闘モードにする神経)が優位な状態が長く続きます。休職に入っても、このスイッチはすぐには切れません。「早く復帰しなきゃ」と焦るたびに、体は仕事中と同じ緊張状態に戻ってしまいます。つまり、焦りそのものが「休めていない時間」を増やしてしまうんですね。

もうひとつ大事なのが、回復には段階があるという視点です。大まかに言うと、ひたすら休む時期、少しずつ活動を再開する時期、復職の準備をする時期の3つに分かれます。

最初の時期は、眠って、食べて、ぼんやりする。それで十分です。活動再開の時期に入ると、散歩や読書など「楽しめること」が少しずつ戻ってきます。復職準備の時期では、生活リズムを勤務時間に近づけたり、図書館に通って半日過ごしてみたりと、負荷を段階的に上げていきます。

カウンセリングの現場でよく見るのは、最初の「休む時期」に復職準備を始めてしまうケースです。段階に合わない行動は、回復を早めるどころか、ぶり返しの原因になります。今の自分がどの段階にいるのか。それを意識するだけでも、過ごし方は変わってきます。

回復を早める3つの習慣

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。段階を問わず土台になる習慣を、3つに絞って紹介します。

▶ 習慣1:起きる時間だけは一定にする

夜眠れなくても、朝はいつもの時間に起きて、カーテンを開けて朝の光を浴びる。これだけで体内時計(睡眠や気分のリズムを調整する体の仕組み)が整いやすくなります。「何時に寝るか」はコントロールしにくいので、まず「何時に起きるか」だけ決めるのがコツです。日中の予定は空っぽで構いません。昼寝をするなら15〜20分ほど、午後3時までに。夜の睡眠を守るための小さなポイントです。

▶ 習慣2:小さな「快」を1日ひとつ入れる

温かいコーヒーを丁寧にいれる。近所を10分だけ歩く。好きな音楽を1曲聴く。そんな小さな心地よさを、1日ひとつだけ意識して入れてみてください。気分が落ちているときは行動の量が減り、行動が減るとさらに気分が落ちる、という悪循環が起きやすくなります。小さな快の行動は、この循環を逆回転させる第一歩になります。これは行動活性化(小さな行動から気分を立て直す心理療法の考え方)と呼ばれる方法で、うつ状態の回復支援にも使われています。ポイントは「やる気が出たらやる」ではなく、「先に予定に入れてしまう」ことです。

▶ 習慣3:焦りが出たら「今は充電期間」と言葉にする

焦りをゼロにすることはできません。大事なのは、焦りが出たときの扱い方です。「早く戻らなきゃ」という考えに気づいたら、「今は充電期間。休むのが仕事」と、あえて言葉にして言い直してみてください。考えを無理に消すのではなく、別の見方を隣に置いてあげるイメージです。

また、焦りが強い日が続くときは、一人で抱えず主治医やカウンセラーに話してみてください。復職のタイミングも体調のことも、一緒に考えたほうが安全ですし、ラクですよ。

まとめ

休職中の過ごし方に、正解はひとつではありません。ただ、起きる時間を守る、小さな快をひとつ入れる、焦りに言葉で応じる。この3つは、どの段階でも回復の土台になってくれます。一気にやろうとしなくていいです。まず一つだけ、今日から試してみてください!

もし一人で抱えていることがあれば、カウンセリングで一緒に整理しませんか。初回30分は無料です。

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