目次
産業医面談は「やって終わり」にしない
面談後のフォロー体制の作り方
面接指導は実施した。産業医の意見書ももらった。でもそのあと、働き方は何も変わっていない——臨床心理士・公認心理師として企業の相談窓口を受託してきた立場から、こうした「聞いただけ」で止まる現場でよくあるつまずきと、機能する社内体制の作り方を整理します。
面接指導のあと、法律上何が求められているか
労働安全衛生法66条の10では、面接指導のあとに事業者が医師の意見を聴取し、必要と判断されれば就業上の措置を講じることまでがセットで求められています。措置の内容は、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など具体的です。
つまり「意見を聞く」だけでは、法律が求める対応の半分しか終わっていません。実務でつまずきやすいのは、まさにこの「聞いたあと」の部分です。
「聞いただけ」で終わる現場、3つのつまずき
面談後の運用を見ていると、原因はだいたいこの3つに集約されます
意見書が人事の引き出しで止まる
産業医の意見書が上長や本人と共有されないまま保管され、措置の検討そのものが始まりません。誰が次のアクションを取るかが決まっていないためです。
「様子を見ましょう」で止まる
具体的な再評価の時期を決めないまま面談を終えると、そのまま忘れられます。次にこの話が出るのは、状態が悪化してからということも珍しくありません。
実行責任者があいまい
措置を実行するのが上長なのか人事なのかが決まっていないと、お互いに相手がやると思ったまま時間だけが過ぎていきます。
機能する体制を作る4つのポイント
面談の運用ではなく、面談のあとの運用を設計します
三者連携の場を最初から設計する
産業医・人事・上長が同じ意見書を見ながら話す短い場を、面談実施の時点であらかじめ組み込んでおきます。あとから調整すると実現しません。
再評価の時期を面談時に決める
「1か月後にもう一度状況を確認する」という約束を、面談のその場で日付まで決めてしまいます。あとで決めようとすると流れます。
実行責任者を1行で記録する
誰が、いつまでに、何をするか。この3点だけを短く記録に残すと、あいまいさがかなり減ります。長い議事録より効果があります。
心理職によるフォローを間に挟む
産業医面談の間隔が数か月空く場合、その間を心理職の面談で埋めておくと、状態の変化に早く気づけます。医師につなぐ判断も早くなります。
申出そのもののハードルも見直す
ここまでは面談が実施されたあとの話ですが、そもそも高ストレス者の多くは面接指導を申し出ません。申出率が5%未満の事業場が76.8%を占めるというデータもあり、申出のハードルを下げる設計自体が別の課題としてあります。この点は高ストレス者が面接指導を申し出ない理由|申出を増やす6つの設計で詳しく解説しています。
あわせて読みたい
ストレスチェック、50人未満も義務化
2028年4月の義務化拡大に向けて、人事担当者が今から準備すべきことを解説しています。
集団分析、”取っただけ”で終わっていませんか
判定図の見方と、職場改善への活かし方を解説しています。
監修:宮碕 景悟(公認心理師・臨床心理士)/プロフィール
出典:労働安全衛生法66条の10、厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(2022年3月)
