仕事がうまく回らない。ミスが続く。人間関係がぎくしゃくする。そんなとき、多くの方が最初に思うのは「自分の能力が足りないから」ではないでしょうか。でも、本当にそうでしょうか。この記事では、うまくいかない原因のうち「自分の外側にあるもの」をどう見分けるか、そして自分を責めすぎずに状況を整理する方法をお伝えします。
目次
「私がダメだから」と考えるクセ
カウンセリングをしていて、いちばんよく耳にする言葉かもしれません。「私の要領が悪いんです」「自分のメンタルが弱いだけなんです」。
不思議なのは、この言葉を言う方の多くが、実際には十分すぎるほど努力しているということです。残業して、休日に勉強して、それでも足りないと感じている。
こういうとき、何が起きているのでしょうか。原因を考えるときに、目線がずっと自分の内側だけを向いているんですよね。人員が足りていない、指示が二転三転する、そもそも一人でこなす量ではない——そういう「外側」が視界に入っていない。
正直言うと、これは真面目な人ほど起こりやすい現象です。責任感が強い人は、まず自分に矢印を向けるクセがついています。それ自体は悪いことではありません。ただ、そのクセが強すぎると、変えられないものを変えようとして消耗していきます。
なぜ人は原因を自分に求めてしまうのか
心理学では、出来事の原因をどこに求めるかを「帰属(きぞく)」と呼びます。原因を自分の中に見るのが内的帰属、状況や環境に見るのが外的帰属です。
人はもともと、この配分をかなり偏った形で行っています。他人の失敗は「あの人の性格の問題」と見て、自分の失敗も「自分の能力の問題」と見る。特に落ち込んでいるときは、内的帰属に大きく傾くことがわかっています。
もう一つ、認知行動療法(CBT/考え方のクセを扱う心理療法)でいう「個人化」という思考のパターンがあります。自分と直接関係のない出来事まで、自分の責任として引き受けてしまう考え方のクセです。上司の機嫌が悪いのは自分のせい、チームの数字が悪いのは自分のせい。そんなふうに、範囲がどんどん広がっていく。
そして、疲れているときほどこの傾向は強まります。睡眠が削られ、余裕がなくなると、状況を俯瞰する力そのものが落ちるからです。つまり、しんどい状況にいる人ほど「自分のせいだ」と結論づけやすい。ここが、この問題のいちばんやっかいなところだと思います。
外部要因を見抜くための5つの視点
では、具体的にどうやって切り分けるか。私がセッションでよくお伝えしているものを挙げてみます。
▶ 1. 「他の人が同じ立場だったら」と置き換えてみる
同じ業務量、同じ上司、同じ納期で、あなたが尊敬している同僚が働いていたらどうなるでしょうか。その人も苦戦しそうだと感じるなら、それは能力の問題ではなく仕組みの問題である可能性が高いです。
▶ 2. 時間軸で比べる
以前は同じ仕事をこなせていたのに、今はできない。だとしたら、変わったのはあなたではなく、環境のほうかもしれません。人員が減った、業務が増えた、上司が代わった。いつから変わったのかを思い出してみてください。
▶ 3. 「自分が変えられること」と「変えられないこと」に分ける
紙に2列書いて、今の困りごとを振り分けてみます。会社の評価制度、他人の性格、組織の方針——このあたりは、たいてい左側(変えられない)に入ります。そこにエネルギーを注いでいたと気づくだけでも、少し楽になったりします。
▶ 4. 事実と解釈を分けて書く
「上司が私を見下している」は解釈です。「会議で3回、私の発言に返答がなかった」が事実です。書き出してみると、自分がどれだけ解釈を足していたかが見えてきます。
▶ 5. 第三者に状況だけを話してみる
自己評価を抜いて、起きていることだけを人に話す。「どう思う?」と聞いてみると、自分では見えていなかった構造の話が返ってくることがよくあります。産業医や社内の相談窓口でも構いません。
自分を責めないことは、責任放棄ではない
ここで一つだけ補足させてください。外部要因を見ることは、「自分は悪くない、全部会社が悪い」と開き直ることではありません。
なんというか、正確に見る、というだけの話なんです。自分の課題は自分の課題として引き受ける。でも、自分の課題ではないものまで背負わない。この線引きができると、改善に使えるエネルギーがちゃんと残ります。
実際、原因を正しく切り分けられた方は、その後の動きが早い。異動を願い出る、業務量の相談をする、転職を検討する。どれも「自分のせいだ」と思い込んでいる間はできなかった選択です。
まとめ
うまくいかないとき、原因を自分の中だけで探していないでしょうか。一度、目線を外側に向けてみてください。全部を一気に整理しなくて大丈夫です。まずは「他の人が同じ立場だったら」と問いかけてみるところから。それだけでも、見え方は変わってくるはずです!
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