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「メンタル不調で休職したい」——その相談、額面どおり受け止めていませんかハラスメント相談と休職相談が重なったときに人事が取るべき初動対応

体調不良を理由にした休職相談の中に、上司からのパワーハラスメントや過重労働が隠れているケースがあります。窓口を分けたまま「休職の手続き」だけで対応を終えると、会社は重大なリスクを抱えることになります。精神障害の労災認定基準と最新の労災統計をもとに、初動で確認すべき実務ポイントを解説します。

1,055件
精神障害の労災支給決定件数(令和6年度・過去最多)
224件
うちパワハラが原因(出来事別で最多)
6年連続
支給決定件数が増加している年数

「休職したい」の裏にあるものを見落とすリスク

人事担当者のもとに届く休職相談の多くは、「メンタル不調で」「体調不良で」という言葉から始まります。ここで診断書を受け取り、休職の手続きを進めて終わり——そう考えるのは自然な流れです。しかし、その体調不良の背景に、上司からの執拗な叱責や、同僚からの無視、あるいは常態化した長時間労働があるとしたら、話は変わってきます。

厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事が、業務による強い心理的負荷(ストレス)として明確に位置づけられています。令和6年度の労災統計では、精神障害の労災支給決定件数は1,055件で過去最多を更新し、そのうち「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という出来事が224件で、出来事別の原因として最も多くなっています。休職相談を額面どおりの「体調管理の問題」として処理してしまうと、この最多要因を見逃すことになりかねません。

窓口が分かれていることで起きる情報の分断

多くの会社では、ハラスメントの相談窓口と、休職・体調不良に関する相談窓口が別々に設置されています。ハラスメント窓口は人事部やコンプライアンス部門、休職の相談は健康管理室や産業医面談、という具合です。それぞれの担当者が専門性を持って対応すること自体は間違っていません。問題は、両者の間で情報が共有されないまま、同じ従業員について別々の「点」の情報として処理されてしまうことです。

本人が「ハラスメントを受けた」とはっきり言わずに、「メンタル不調で休みたい」とだけ伝えてくるケースは珍しくありません。ハラスメントを訴えることへの不安や、事を大きくしたくないという気持ちが背景にあるためです。休職相談を受けた担当者がハラスメントの可能性を意識せずに手続きだけを進め、後になって別の相談窓口や外部(労働基準監督署、弁護士など)を通じてハラスメントの事実が明らかになった場合、会社は「知る機会があったのに確認しなかった」という状態に置かれます。これは、安全配慮義務の観点からも、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)が事業主に求める事実確認の措置義務の観点からも、大きなリスクです。

初動で確認すべき実務ポイント

休職・退職の相談を受けたときに、機械的に確認しておきたい3つの視点

🗣️

相談内容を「体調」だけで終わらせない

「なぜ体調を崩したと思うか」「きっかけに心当たりはあるか」を、決めつけずに尋ねます。パワハラという言葉が出なくても、特定の上司との関係や業務量の急激な変化といったキーワードが出たら、深掘りするサインです。

🔗

ハラスメント窓口と休職窓口の情報を突き合わせる

同一の従業員について、過去にハラスメント相談や産業医面談の記録がないかを確認します。窓口が別々でも、人事として横断的に状況を把握できる体制(記録の一元管理・定期的なすり合わせ)を用意しておくことが重要です。

⚖️

「疑い」の段階で事実確認の準備をしておく

ハラスメントの可能性が見えた時点で、パワハラ防止法の指針が求める「事実関係の迅速かつ正確な確認」に向けて、相談記録の整理や関係者ヒアリングの体制を検討します。休職の可否判断と、事実確認の手続きは並行して進める必要があります。

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お問い合わせ・ご相談

監修:宮碕 景悟(公認心理師・臨床心理士)/プロフィール

出典:厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」、厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準」、厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

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