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「うちは50人未満だから産業医は関係ない」——2028年のストレスチェック義務化拡大で、その前提が揺らぎます
労働安全衛生法上、産業医の選任義務があるのは常時50人以上の事業場だけです。この基準自体は変わりません。ただし2028年4月、ストレスチェックの実施義務が事業場規模を問わず全事業場に拡大される予定で、50人未満の会社にも「医師にどう関わってもらうか」という現実的な課題が生まれます。本記事では、50人未満の会社が取り得る選択肢を、地域産業保健センターと嘱託産業医契約の両面から整理します。
50人未満は産業医契約の義務がない——ここは誤解しないでおきましょう
まず正確な前提を確認します。労働安全衛生法13条が産業医の選任を義務づけているのは「常時50人以上の労働者を使用する事業場」です。この基準に該当すれば、事由が発生してから14日以内に産業医を選任しなければなりません。逆に言えば、常時使用する労働者が50人未満であれば、産業医を選任する法的義務は今も、そしてこの先も課されていません。「うちは50人未満だから産業医は要らないはずだ」という理解自体は、間違っていません。
ただし「義務がない」ことと「関わりが不要」であることは同じではありません。労働安全衛生法13条の2は、50人未満の事業場についても「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない」と定めています。これは努力義務、つまり「できる限りやってください」という位置づけで、罰則を伴う選任義務とは性質が異なります。とはいえ、行政がわざわざ条文を置いているのは、50人未満の事業場でも医師の関与が想定される場面が実際にあるからです。
それでも医師の関与が必要になる場面——2028年のストレスチェック拡大が分岐点
これまで50人未満の事業場では、ストレスチェックの実施も努力義務にとどまっていました。しかし改正労働安全衛生法により、2028年4月1日を施行期日として、事業場規模の制限を撤廃してすべての事業場にストレスチェックの実施が義務づけられる見込みです。対象は「常時使用する労働者」で、契約期間が1年以上(または更新で1年以上見込み)かつ週の労働時間が同種業務の正社員の4分の3以上であることが目安とされており、パート・アルバイトも対象に含まれ得ます。
ここで実務上の壁になるのが「高ストレス者」と判定された従業員への面接指導です。ストレスチェックは実施するだけでは意味がなく、高ストレス者から申し出があれば医師による面接指導を行う必要があります。50人以上の事業場であれば選任済みの産業医がこの役割を担いますが、50人未満の事業場には産業医がいません。つまり「誰が面接指導をするのか」という医師の確保そのものが、50人未満の会社にとって新しい課題になります。ストレスチェックそのものより、その後の面接指導の受け皿をどう用意するかが実務の分かれ目になりそうです。
50人未満の会社が使える選択肢
産業医を「選任」しなくても、医師に関わってもらう方法は複数あります
地域産業保健センターを無料で使う
労働者健康安全機構が全国の労働基準監督署の管轄ごとに設置している「地域産業保健センター(地さんぽ)」は、労働者50人未満の事業場とそこで働く人を対象に、健康相談・長時間労働者への医師面接指導・高ストレス者への面接指導などを無料で提供しています。利用には事前の申し込みが必要で、すでに総括的に指導する産業医がいる事業場は対象外です。まず地元のセンターに問い合わせるところから始められます。
嘱託産業医と部分的に契約する
義務がなくても、月1回程度の訪問を前提に嘱託産業医と契約すること自体は可能です。費用は契約形態や地域差が大きいものの、業界情報では50人未満向けの目安として月数万円台からという報酬相場も紹介されています。ストレスチェックの実施や健康診断事後措置が別料金になるケースもあるため、面接指導だけを依頼したいのか、日常的な相談役として関わってほしいのかを先に整理してから見積もりを取ると比較しやすくなります。
外部委託先の面接指導オプションを確認する
ストレスチェックの実施を外部の機関に委託している場合、その委託先が高ストレス者向けの面接指導をオプションで提供していることがあります。地域産業保健センターの予約が取りにくい繁忙期や、より柔軟な日程調整が必要な場合の補完策として検討できます。いずれの選択肢を使うにせよ、2028年の義務化を待たずに「面接指導を誰に頼むか」を先に決めておくと、当日になって慌てずに済みます。
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監修:宮碕 景悟(公認心理師・臨床心理士)/プロフィール
出典:厚生労働省「確認しましょう! 常時50人以上の労働者を使用する事業場においては」、労働安全衛生法第13条・第13条の2、こころの耳「地域産業保健センター(地さんぽ)」
